大久保山キノコ図鑑・早稲田大学(2011年版).pdf

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2011 年版
大久保山キノコ図鑑
早稲田大学本庄高等学院
スーパーサイエンスクラブ(SSHクラブ)
・菌類研究班編集
氏名
はじめに
この図鑑は早稲田大学本庄高等学院スーパーサイエンスクラブ
・菌類研究班における
過去5年間の活動の中で撮�½�した写真をもとにまとめたものである。
「ハンディ図鑑」
という�½�をとったので、生徒諸君にはこれを片手に本学院・大久保山の森を歩きながら
様々なキノコを観察し、キノコの奥深い世界を垣間見てもらえれば�½�よりである。
※調査・取材:2011 年度スーパーサイエンスクラブ・菌類研究班
1年藤倉花帄、山崎美輝 2年堤�½�香、堀川華波、長谷川加奈、麓達也、
3年稲垣恵美、
保延和樹
※本書は、内野郁夫(総合学習科)が中心となって編集した。
キノコの宝庫・大久保山
本学院の敷地は総面積約
90ha。多くがコナラやクヌギ、エゴノキ、ヤマザクラなど
の�½葉広葉樹におおわれ、
そこにアカマツが混生するいわゆる雑木林の様相を見せてい
る。
学校の中に森があるのではなく、森の中に学校があるのが本学院の最大の特徴とい
えるだろう。
広葉樹と針葉樹が混淆することもあり、ここで観察されるキノコの種数は
菌類研究班が記録したものだけでも百数十種を数え、
中には希少な種も含まれる。
詳細
に調査すればおそらく3百種を�½く超えることは間違いない。
生態系が豊かに保たれて
いる証であり、
学院生はこの恵まれた自然環境の中で日々の生活を送っているのである。
1.菌類とキノコ
森の�½ち葉をめくる。すると、�½
いクモの巣のようなものが�½ち葉
をつづっているのを見かけること
があるだろう。これがキノコの本�½�
である菌糸。菌糸は�½ち葉を分解し
て栄養分を吸収しながら生長し、あ
る時、子孫を残すための器官をひょ
っこり地上に現す。植物でいえば花や果実に相�½�するが、これを私たちは「キノコ」と
呼ぶ。もちろんキノコは�½ち葉だけでなく、枯れ木や倒木、地面からも出るのだが。
菌類とは、
葉緑素を持たないため炭酸同化�½�用を行わず、
栄養を他の有機物から摂取
して生活する生物である。
菌類は栄養器官として菌糸を、繁殖器官として子実�½�を�½�成
する。キノコとは菌類の繁殖器官である子実�½�が�½�態的、組織的に進化したもの。肉眼
で見ることのできる、カビの「ある特別の姿」といってもよい。
2.キノコは植物や動物とは違った生物
胞子で増えるという意味からかつてはシダ類、
コケ類と同じ植物の仲間に入れられて
いたが、現在では完全に独立した生物群と考えられている。諸説あるが、自然界は大ま
かにいって植物界(生産者)
、動物界(消費者)
、菌界(分解者)の3グループから成り
立っているといってよい。
3.担子菌類と子のう菌類
キノコをつくる菌類は大きく2グループに分けられる。
ひとつは担子菌類で、担子器
と呼ばれるこん棒状の器官の先端に胞子(担子胞子)をつける。もうひとつは子のう菌
類。
こちらは子のうと呼ばれる袋の中に胞子をつくるもので、あまりキノコらしくない
ものが多い。市販されているキノコはほとんどが担子菌類に属している。
4.キノコがないと私たちは生きていけない!?
「エッ、うそー」と思うだろう。でも本�½�。もちろんキノコをそのまま食べるという
意味ではない。
キノコは生態系の中で分解者として有機物を無機物に還元する。
その際、
酸素を吸収して二酸化炭素を放出する。
二酸化炭素は地球温暖化の元凶となっているが、
それ自�½�は決して悪者ではない。
私たちが化石燃料を消費することによってもたらされ
る�½�剰分が問題なのだ。もしも植物が酸素を放出し、一方的に二酸化炭素を吸収し続け
るならば、植物は二酸化炭素の欠乏により光合成ができなくなり、遠からず自らの首を
絞めることになるだろう。
キノコを含めた菌類は、
私たちの目につきにくいところで頑
張って働いているのである。キノコは偉い!
5.発生場所によるキノコの色々
①地上性
〇�½葉分解菌:地表や地中の�½葉などから栄養分を摂取し、地際にキノコをつくる。モ
リノカレバタケ、ハナオチバタケ、ムラサキシメジなど。
〇菌根菌:樹木の生きた根につき、水分や養分のやりとりを行う共生生活を営む。マツ
タケ、ハツタケはマツ。ホンシメジはナラ。ベニテングタケはカンバ類。
②樹上性
〇木材腐�½菌:樹木の幹や枝、切り株などから栄養分を摂取し、キノコをつくる。シイ
タケ、エノキタケ、キクラゲ、カルノコシカケ類など。
③その他
〇腐生菌:有機物の多く堆積した所にキノコをつくる。オオホウライタケ、ノウタケ等
〇糞生菌:動物の排泄物を栄養源とし、その上にキノコをつくる。ワライタケ、ツクリ
タケ、センボンサイギョウガサなど。
〇冬虫夏草:昆虫、クモ類に寄生して病原菌となり、キノコをつくる。セミタケ、クモ
タケ、ハナサナギタケ、オサムシタケなど。
※他にも焼け跡に発生するもの、シロアリの巣から出てくるもの、キノコの上に生える
ものなど、キノコの�½�割はさまざまだ。
6.キノコの部�½�と用語
7.食・毒の判断における迷信
以下は昔からいい伝えられている迷信である。これらは決して信じてはならない。
縦に裂けるキノコは食べられる。
色が鮮やかなキノコは毒。地味なものは食。
虫の食べ跡があるから食べられる。
ナスと一緒に煮込むと食べられる。
木に生えるキノコは食べられる。
8.キノコの食・毒
本図鑑では●、✖、●の記号を用いて大よその目安を表している。
●●
✖✖
食用可。
食用可。美味しい。
中毒症状を起こす。
死亡例はないが、強い中毒症状を起こす。
●●●
食用可。たいへん美味しい。
✖✖✖
猛毒。致�½的な中毒症状を示す。
料理法、食べ方を間違えると中毒する。
Ⅰ 担子菌類
1.ハラタケ類
【ヒラタケ科】
ヒラタケ
Pleurotus ostreatus
●●●
主に広葉樹の枯木、
伐り株などに多数重なり合って
発生。生長すると傘が平たくなるのでこの名がある
が、
円�½��½�扇�½�の傘の�½�、
放射状のひだの様子から西
欧では
Oyster Mushroom
と呼ばれる。
傘の色は�½�½�
灰色。
本校では原木�½培を行っている。
味に癖がない
ため、様々な料理に合う。木材腐�½菌。
【発生時期】
晩秋�½�春
キヒラタケ
Phyllotopusis nidulans
広葉樹や針葉樹の材上に多数重なり合って発生す
る小型菌。
大久保山ではアカマツの切り株に多い。
は半円�½��½�円�½�で柄はなく、
表面は淡黄色の粗毛が密
生。
肉は薄く柔らかいが強靭。
毒性はないものの不快
臭があるため、食用には適さない。木材腐�½菌。
【発
生時期】主に秋
マツオウジ
Lentinus lepideus
●●
針葉樹の切り株や用材などから発生する中�½�大型
菌。
質は強靭で、
アニスのような松ヤニのような独特
の強い臭いを持つ。
傘表面は�½�½�淡黄色で褐色の鱗片
を同心円状につけにつける。
ひだはやや疎で縁は鋸歯
状。肉は緻密で歯触りがよい。ときに嘔吐、下痢など
の中毒症状を起こすこともあるので要注意。
木材腐�½
菌。
【発生時期】初夏�½�秋
シイタケ
Lentinus edodes
●●●
日本人にはもっとも馴染み深いキノコで、
江戸時代
から�½培されている。
市販のものは室内で温度管理し
て育てる菌床�½培が多く、
ほだ木に種駒を打ち込む原
木�½培のものは少ない。本校で�½培しているのは後
者。
コナラやクヌギなどブナ科樹木を主とした広葉樹
の枯木、
倒木に発生。傘は淡褐色�½�茶褐で�½色�½�淡褐
色の綿毛状鱗片をつけ、
縁は内側に強く巻く。木材腐
�½菌。
【発生時期】春と秋の年2回
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